七色

感じることを怠けないように。

ベルヴィル・ランデブー

ベルヴィル・ランデブー オリジナル・サウンドトラック(CCCD)

ベルヴィル・ランデブー オリジナル・サウンドトラック(CCCD)

  • アーティスト: サントラ,Charles Prevost Linton,Benoit Charest,M,Beatrice Bonifassi,Jean-Claude Donda,Lina Boudrault,Marie-Lou Gauthier
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2004/12/08
  • メディア: CD
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映画がとても良かったので、サントラを買ってしまった。(映画のあらすじは公式サイトを参照のこと。) エンディングテーマになってた表題曲「ベルヴィル・ランデブー」が、やっぱりとてもいい。


ぼくはホノルルじゃ終わりたくない
鳥みたいに歌いたくない
ヘンな声で歌いたいんだ
ものすごくヘンな声で
ベルヴィルの三つ子たちみたいにスウィングして

カトマンドゥでなら終わってもいい
ウーでじょうずに韻が踏めるから
でもやっぱりイカれてたい
イカれて騒いでいたいんだ
ベルヴィルの三つ子たちみたいにスウィングする


聴いてると、この曲がスタッフロールに被って流れるのを観た時の「ああ!」って気持ちを思い出す。この映画は大ざっぱに言うと、うんとデフォルメされたキャラクターや世界と、おいおいって突っ込む隙もなく突っ走ってくストーリーから成ってる。(台詞がものすごく少ないから、音楽も素晴らしい構成要素のひとつ。)何もかもがシュールでナンセンスでばかばかしくて、まじめくさったところなんてひとつもない。リアリティなんかちっともないようで、実際にない。

でも、ものすごくスジは通ってる。最初から最後までずっと、ちゃんとシュールでナンセンスでばかばかしい。それがかえって、ものすごくリアルだった。……私たちが生きてるこの世界だって、矛盾だらけで、変なひとがたくさんいて、おかしなことがいっぱいあって、切り抜ける手だてはつじつま合わせがほとんどで、言葉で正しく説明できることなんかほんの少しで、身内の愛は押しつけがましくて身勝手で、ないはずのものがでんと居座ってて、避けられないあからさまな暴力があって、ごくまれに奇跡みたいな瞬間や出会いがある。全部ひっくるめて日常で、なにが良くてなにが悪いのか、きっぱり区別なんかつかない。そんな人生にもし一本スジを通せるとしたら、シュールでナンセンスでばかばかしいこと、くらいしかないんじゃないかと思う。


ぼくはシンガポールじゃ終わりたくない
辞書をめくったりプチ・フールをつまんだりしたくない
バカでいいんだ
ものすごくバカで
ベルヴィルの三つ子たちみたいにひっくり返って


共感するのは、多分すごく間違ってる。でも、ほんとそうだよなあと思ったんだ。このベルヴィルの三つ子って、だってすごいんだよ。心強かったんだよ。年を取るのと毒気が抜けるのは全然同じじゃない! 最近観た老人が出てくる話の中では、この映画がいちばん好き。面白かった。