七色

感じることを怠けないように。

禁涙境事件

禁涙境事件  ”some tragedies of no-tear land”

禁涙境事件 ”some tragedies of no-tear land”

戦地調停士シリーズの4作目。
5つの塔から成る「十字線(アンカー)」のせいで、魔法がほとんど使えない街、「禁涙境」。魔導戦争の隙間にある、その非武装地帯では、数十年の間に幾つかの陰惨な事件が起こっていた。物語はこまぎれに思われた事件をひとつずつ追いながら、全ての事件を結び、「十字線」の正体と特殊な地位を築いていた街の成立から壊滅までを描いている。

なんとなく、今までの話とこれからの話のつなぎ、みたいな感じ。物語を通して主人公格のキャラクターがいなくて、前3作で主役を張ってたキャラと、これから主役を張りそうな新キャラが、ぱらぱらと顔見せのように出てくる。ばらばらに思われた全ての事件を結ぶ軸も弱くて、全体として散漫な印象。…でも、この「禁涙境」という街そのものが、私には面白かった。なぜこの街では魔法が使えないのか。「十字線」とはなんなのか。わからなくても人はそこに住み着き、その恩恵を受け、そのことが近い未来に街の壊滅を呼ぶことなど思いもつかずに生活する。その目の見えてなさや、現実に適応するしたたかさがすごくリアルで、恐ろしかった。

帯の <仮面の戦地調停士の過去がついに明かされる――?!> ってあおりは良くないと思うな。これぐらいの過去は前作でも明かされてたよ。他に書けることがなかったのもわかるけど。