七色

感じることを怠けないように。

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

獣の奏者の続きが借りられなかったので借りてみた。獣の奏者より年少者向けなのかな? きちんと子どもにも分かるように書かれていたけど、大人が読んでも十分面白かった。というか、児童文学なのに主人公が中年(年下!)の女性用心棒というのにびっくりした。異世界が舞台で、更にその世界にとっての異世界も描いているのに、描写が具体的で、かつ長々しくもなく、山の風景や街の様子、人々の暮らしざま、異世界〈ナユグ〉の様子も生き生きと伝わってくる。ほんとうに、よく練られた文章だなあ。すごい。
話を貫く世界観……価値観??は、なんとなく蟲師の世界と似てる。こちらの世界の人々や生き物も、向こうの世界の生き物も、それぞれが、それぞれの命を必死に生きているだけ。そこに命のやり取りがあったとしても、どちらが悪いなんてきれいに割り切れない。

 ジンたちがとってきた鳥が、むぞうさに地面におかれている。そのぐったりとした死骸をみて、チャグムは、ふと、ぞくりとからだの底からふるえがはしるのをおぼえた。
 チャグムの手をとって脈をみていたタンダが、チャグムをみ、その視線のさきをみた。
「……食う、食われる。のがれる、とらえられる。」
 つぶやいて、タンダはチャグムをみた。
「当事者にとっては、この世でもっともたいせつなことなのに、なんとまあ、あっけなく、ありふれたことか……。な。」
 チャグムの目に涙がもりあがった。バルサの手がチャグムの肩をだいた。バルサのかすれた声が、ささやいた。
「おまえがたすかって、ほんとうによかった。───まにあって、ほんとうに、よかった。」

今まで数え切れないほどの命を喰らってきて、自分がいつか何かに喰らわれるかも?なんてちらりとも考えつかない、現代人はなんて不自然な生き物なんだろうな。


もう一箇所引用。
子どもの頃に、自分ではどうしようもないことがあって、そのために人生をねじ曲げられた、と思うことは、この物語の主人公のバルサには遠く及ばないけど、わたしにもある。そのために、自分の身近の大切なひとをひどく傷つけてしまうのでは?と恐怖を覚えることも、やっぱりある。

「十六のときジグロに、わかれようっていったんだ。わたしはもう、自分の身は自分でまもれる。追手にまけて死んだら死んだで、それがわたしの人生だって。もうジグロにはじゅうぶんたすけてもらった。もういいから、他人にもどって、どうか自分の一生を生きてくれって、ね」
 チャグムは、口の中でつぶやいた。
「ジグロは、なんて?」
「いいかげんに、人生を勘定するのは、やめようぜ、っていわれたよ。不幸がいくら、幸福がいくらあった。あのとき、どえらい借金をおれにしちまった。……そんなふうに考えるのはやめようぜ。金勘定するように、すぎてきた日々を勘定したらむなしいだけだ。おれは、おまえとこうしてくらしてるのが、きらいじゃない。それだけなんだって、ね。」

心にしみたー。どうしたって割り切れないことを割り切れないって認めて、こうしてる自分が嫌いじゃないって、少なくともいつかそう思えるようには、きちんと生きてかなきゃいけないんだな。



Landreaall 4 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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Landreaall 5 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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Landreaall 6 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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おー、学園もの! 文句なく楽しい。キャラがぐんと増えても、ごっちゃにならずに上手く書き分けられててすごい。授業とか試験とか勉強の描写がほとんどないのも潔くて良い。アンちゃんの性別はいつ明かされるんだろ。男性ぽいけど。