七色

感じることを怠けないように。

 夜の花は一瞬

 ラムネ

 花火

 ゆかた

線路の反対側はべつせかいだった。毎年音を耳にするばかりで、そう気にしたこともなかったけど、あの音はこんなふうに鳴ってたんだなあ。ひかり、音、熱、歓声、泣き声、色とりどりのゆかた、熱いままのアスファルト、ぬるんだラムネ、食べ物の匂い、夜。いまいましい夏のまほう。……夏の夜がどれだけすてきでもわたしはそれをリアルには感じられないけど、でも、いつかこの場所やこの時間をなつかしく思い出すこともあるんだろうか。そう思うとすごく不思議だった。過ぎゆく夏を惜しむ気持ちなんて更々持ち合わせていないのに。

来年もまたこうしてこの花を見れたらいい。そのときは借り物じゃなく、おろしたての自分の下駄を履いてるかもしれない。そんな未来はまあ、悪くないかもしれないけどね。たとえ身を任せても、心を委ねることはきっとない。なまあたたかい夏の夜のリアル。