七色

感じることを怠けないように。

 迷子

わたしは同じところに何度でも行きたい派です。好きな場所には何度行ったって飽きない。好きな場所が、そこが、そのようにあるってことはすごく得難いことだし、それにやっぱり何度行ったって新しいし。すきなひとには何度だって会いたいじゃないか。それと似たきもちもある。そこと、もっと、仲良くなりたい。なれ合いや保守は、もちろんあるのかもしれない。でも、これはつまらないことじゃないです。一度行ったところにどうしてそんなに何度も行くの?って訊くひとにはわかってもらえないかもしれないけど。ほしいのは既知って安心だけじゃない。……毎年、2月に梅が咲くことに感動する。この時期桜が咲くことにきずつく。まったく同じ文章だって、その時々で印象はちがう。それは驚きで、時に絶望で、だけどやっぱりよろこびでもある。今の時期って、夜闇に香る沈丁花に刺されて死にそうじゃない。毎年、最初に「あ」ってあの香りに気づくのは夜で、あの瞬間のゆれかたってすごい。去年もそうだった、なんて想像もつかないくらい。静かにはげしくきもちがゆれる。


死んでから行く場所をさがしてるのかもしれないなあ、と思うこともある。帰りたい場所はもうないから、せめて行く先を。